徒然ぜぶらーふ

  コーヒーと自転車散歩と日々徒然

ずっと友達

今週のお題「わたし○○部でした」

 

昔々の30数年前、バレーボール部でした。同学年は6人きっかり。裏切りっこなしよ!の6人です。

それも全員初心者。

最初はどっさりいたはずの仮入部者はいつのまにかいなくなり、中学時代にバレー部だった子はなぜかみんなテニス部に入ってしまった。

そもそも私たちの時代の女子バレー部といえばキツイ部活の代表みたいなもの。

テニス部が5時半にサックリ終わって髪の毛整えて、いい匂いさせて「今日はどこ寄ってくー?」なこと話しながら帰っていくのを横目に、全然終わる気配のない練習に腹の中では「もう終われよ!」と悪態つきながら「もう一本お願いしますっ!」と声を上げていたっけ・・

練習もキツいし、OB・OGは毎週わんさかくるし、休みはないし。ウェイしたかった訳じゃないけどアザいっぱい作って汗臭くなって、何やってるんだワタシ?とはいつも思ってた。

他の5人も同じ。お互いに「今更裏切れない」って想いだけで3年間やった。

 

 

ある土曜日、6人で部活前にお弁当食をべながら「今日コーチくるよね」とゲンナリしていた。

毎週土曜日は確実にOBコーチ(大学生)がきて、練習はエンドレスなのだ。

なぜOBたちは5時過ぎからどんどん増えてくる?
なぜ顧問がその場にいるのに7時や8時まで体育館使うことを止めない?
最終下校時刻はどうした??

疑問だらけだ。

お弁当を食べる箸も進まずドヨンとした空気が漂う。

「終わりが見えないなら始まりを少しでも遅くしたいよね」

それが私たちのささやかな願いだった。

 

ふと、誰かが言った。

「コーチのシューズを隠すのはどうだろう?」

「それだ!」

私たちは食べかけのお弁当をほったらかして部室に走った。

コーチは部室で着替える。シューズは部室に置きっぱなしだ。

ちなみに部室は男女共用。共用とは言いつつ実際のところ男子バレー部のものだった。今だったら絶対問題になると思う。

男子臭の満ちた部室へそーっと忍び寄る。今日、男バレは遠征のはずだ。

コン、コン

一応ノックしてみる。

誰もいない。よし、今だ!

 

置きっぱなしのシューズはいっぱいあった(どれも臭い)。
そんななか、ちょっと小綺麗なシューズケースに入っている一足を見つけた。
ケースを開ける。

「これだ、間違えない」

いつも私たちがヘロヘロで体育館の床に這いつくばっていると見える靴だ、見間違えるわけがない。

さあ、どこに隠す。

コーチに「隠された」と思わせてはいけない。

よく探したら見つかるけど、なかなか見つかりにくい場所に隠さねばならない。

「男バレの奴らが散らかしてどっか行っちゃったけど、あぁここにあったんだ」という体にする。万が一私たちが隠したと勘付かれようものなら練習で地獄をみることになるから。

幸いに部室は汚い。

新しめの汚い山(なんだそりゃ)の奥の方にシューズケースを埋めて、その山を他の山々の影に持っていく。悪いのは部室を散らかす男バレだ。

これでいい。

私たちは6人でゾロゾロと、それでもそーっと部室を後にした。

 

13時、部活開始。

通常、アップが終わった頃にコーチは現れる。

私たちの目論みでは30分くらいは探すはずなので、今日は13:45ごろに現れるはずだ。

たった30分、されど30分。それが幸せな時間。

「まだ来ない」

それだけのことが私たちの表情を穏やか、いやニヤニヤしたものにする。

ニヤけながらタラタラとランニングをして、床に寝転んでゆったりとストレッチをした。あぁ、永遠に寝転がっていたい・・・

 

「よっこらしょ」

ストレッチが終わり、油断しまくりの心で起き上がると、そこにコーチがいた。

無表情で俯き、一本一本指にテーピングを丁寧に巻いていた。

「新品?!」

シューズを見て一斉に6人で目が合った光景がいまでもありありと浮かんでくる。

5人とは今でも友達だ。