徒然ぜぶらーふ

  コーヒーと自転車散歩と日々徒然

歯は一生モノ。大事です。(其の3)

4/9に次男の大学入学式を終えて、12日から10日間口腔外科に入院してきた。これは備忘録まで。

  1. 手術までの経緯
  2. 入院前準備
  3. 手術前日
    ・やっと入院
    ・俺、歯医者屋だから
  4. 手術当日と術後2日間
  5. 術後3日目以降
  6. 退院と経過
  7. 入れ歯かブリッジかインプラント

 

(3)手術前日

手術が4/12。入院はその前日の4/11。

病院からの入院説明では持ち物は超こじんまりしていたが、10日間も泊まり込むと思うと否が応でも荷物は増える。だって手術の後どれくらい元気があって洗濯ができるのかまったく判らないのだ。

コロナ禍、家族といえども手術の立ち会いも入院中のお見舞いも原則禁止。着替えなどの届け物もナースセンターで受け取ってもらって、入院患者が外部の人間と接触することはできない。

そもそも旦那と大学生の息子2人。娘がいれば着替えなど必要になればお願いできるが、男子たちにお願いするのは気が引ける。

結果、入院当日に休みをとって送ってくれた旦那に「恥ずかしいくらい大荷物だね」とドン引きされた。

 

●やっと入院

受付をして、病棟に上がって、これから10日間お世話になる担当看護師さんとご挨拶。手続きや身体計測等々を済ませるともうお昼だった。
それにしても看護師さんたち、めちゃくちゃ元気で明るい。そしてキビキビしている。どんな患者さんでも安心するし元気がもらえる。ハードワークなのにすごいなぁ、と感動。

病院食は期待していなかったが良い意味で裏切られる。美味しい。

食後、することもなく持ってきた本を読もうと一冊選ぶ(とりあえず図書館で5冊ほど借りてきた。荷物が重かったのはこれのせいもある)。
選んだのは「死者の奢り・飼育」(大江健三郎)。いやこれ、病院で読む本じゃない(汗)間違えた。
今は入院中に他の患者さんと交流するのは禁止。みんなカーテンをひいて静かにしている。閉ざされた空間で、それも明日手術という状況で死体を洗うアルバイトの話とか読んじゃいけない……

午後3時。誤った本の選択のせいでどんよりした気分になっているところに主治医から呼び出しがかかった。

 

●俺、歯医者屋だから

診察室に入るや否や「ここ座って」と言われ、あれよあれよというまに紙エプロンをかけられて治療体制。目の前には主治医ではなく、会ったことのない恰幅の良いおっちゃんがニヤリ。ちょっと待って、何するの?

「今日はね、こっちの歯の根を治療するから。これやっておかないと明日こっちの歯も抜かれちゃうからね」

どうやら、左前上1番目の歯を残すために根の治療をしてくれるらしい。なにも聞いてなかったけど、この歯はできれば残したいとお願いしてあったから対応してくれたみたいだ。

おっちゃんは「さあ、やるよ」といきなり歯の裏をガリガリ削って掃除用の針金みたいややつで歯の中をガシガシ掃除している。麻酔もなしに始まってビビったけど、そういばこの歯は神経を抜いてしまっているんだと思い出して安心した。

手技が見えるわけではないのだが、動きに迷いがなくて手際が良いのがわかる。10分くらい掃除したり薬を注入したりして「はい、写真とるね」と言われた。

歯科レントゲンコーナーに連れて行かれて写真をとる。
おっちゃんはモニタで画像を見ながら「こんなんでいいかなぁ?」と明日手術に入ってくれる予定の若い先生を呼び出して確認していた。

よくわからないが、明日の手術のための準備がひとつ終わったらしい。
「それにしてもなんでこんなになるまで放っておいたの?もっと早くにくれば根の治療するだけで入院手術なんてしなくて済んだのに」
おっちゃんが呆れ顔で聞く。
「だって『これはもうどうしようもない』って近所の歯医者さんに言われてたんですよぉ」
おっちゃんの和んだ雰囲気につられて私は情けない声で答えた。

私の返事を聞いておっちゃんは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「今度は良い歯医者さん探しなよ」
そういわれても、良い歯医者なのかどうかなんて判らない。
「そう言われても良い歯医者さんかどうか判らないもの。判るなら迷わずそこに行きますよ」
「俺たちは、街の歯医者さんのここが良い、ここは悪いって言っちゃいけないのよ、ごめんね」

おっちゃんはちょっと申し訳なさそうに言った。
それは私にも判る。口腔外科の先生の口コミなんてあったらみんながその歯医者さんに殺到してしまう。だから紹介してほしいなんて言わない。でも、やっぱりちゃんとした歯医者さんにかかりたい。だから私は近所のいくつかの病院をリストアップしてきた。

「紹介はお願いできないけど、相談は乗ってくれますよね」

退院する前に「手術の後に行くならココとココ、どっちがいいですかね」という質問をするつもりだ。

「普通は紹介状を書いてくれた歯医者さんに戻すのがルールなんだけど、あんた耳鼻科からきてるからね。歯医者さん探しの相談ならのれるよ」

結局、左前上1番目の歯の根の治療はたった15分であっさり終わった。根の治療といえば何回も歯医者に通うイメージだったが一気に終わったらしい。
「あっという間でしたね」
私が半ば感動して言うと
「俺、歯医者屋だからね」
どうやら口腔外科の中には生粋の歯医者さんとか、粘膜系とか、顎骨系とかいろいろあるみたいだ。おっちゃんは大工みたいな良い歯医者さんだった。

 

→  手術当日と術後2日間 へ続く